コラム

家づくりのこと

近畿大学副学長 岩前篤教授 トークセッション<前編>健康な住まいが育む未来への道筋

スマイクホームは新たなブランドミッション「emotive day〜人生にもっと感動を〜」を掲げ、お客様の豊かな暮らしの実現を目指しています。人生における感動的な瞬間を積み重ねていくためには、まず健康で安心できる住環境が不可欠です。

そこで今回、新ブランド発表イベントに、健康と住宅のスペシャリストである近畿大学副学長の岩前篤教授をお招きし、株式会社LOCAS取締役コマツアキラ氏をファシリテーターとして、代表取締役大石剛史とともにトークセッションを開催しました。前編・後編にわたり、岩前教授の貴重な講演内容をお伝えします。


近畿大学副学長 建築学部教授建築学部 建築学科 総合理工学研究所所属
岩前 篤教授

岩前 篤 教授

近畿大学副学長 建築学部教授 建築学部 建築学科 総合理工学研究科所属

建築物における健康で快適でエネルギー性能に優れた住宅を研究。健康と住宅のスペシャリスト。日本・アジア気候特性と暮らし方に基づく計画手法、ゼロエネ技術、健康維持増進技術を対象とした研究、熱と空気の数値シミュレーション、省エネルギーなどを研究。


大阪・関西万博が示す未来のビジョン

皆さんは今年開催されている大阪・関西万博にはもう足を運ばれましたでしょうか。私も先日行ってまいりましたが、各パビリオンが想像以上に楽しく、お国柄がいろいろ出ていて、まさに「ここに世界がある」という感覚を味わうことができました。

さて、さまざまなパビリオンが並ぶ中で、特に注目していただきたいのが「大阪ヘルスケアパビリオン」です。ここでは未来の医療について「ホームホスピタル」という興味深いビジョンが示されています。従来の「病気になってから病院に行く」という考え方ではなく、普段の暮らしの中で「いかに病気にならないか」を考えていくことが必要であるというものです。

実はこれまでの日本の医療は、病気になってからの治療技術に医療費全体の9割が投じられ、予防には1割しか使われていませんでした。しかし欧米社会では治療と予防に半々の配分となっており、コロナ禍を経て日本でも予防医療への関心が高まっています。

このように住まいが健康の起点となる時代が到来する中、住宅会社の役割はますます重要になってきています。単に建物を提供するだけでなく、そこに住む人々の健康を支える責任も担っていくことになるのです。

ただ心配なのは、住まいが「ホームホスピタル」と言われる中で、住宅会社がどこまでついていけるのだろうかということ。これは私としても非常に気になるところです。

近畿大学副学長 建築学部教授建築学部 建築学科 総合理工学研究所所属
岩前 篤教授

地域の健康格差という現実

都道府県別の1人当たりの医療費を見ると、興味深い事実が浮かび上がります。「田舎は健康」というイメージがある方も多いかと思いますが、田舎で美味しい水を飲み、美味しい空気を吸い、美味しい食べ物を食べたら長生きするかといったら、そうではないのです。

厚生労働省の発表データによると、東京から離れるほど医療費が高くなっていく傾向があります。広島もそこそこ高い方に位置していますね。東京に比べて不便な場所にいるけれど、その分自然が豊かで幸せな暮らしをしているという考えは、案外勘違いかもしれません。

もう一つ重要なデータがあります。都市の規模ごとに、そこの住民が平均1日どれくらい歩くかという調査です。特に女性に顕著ですが、田舎に行くほど歩かない傾向があります。実は広島も相当歩かない地域に分類されます。これは自動車依存が原因と考えられ、トヨタやマツダなど自動車会社がある地域では、本当に歩かないのです。「自然に近いから健康」という考えは、まず捨てていただきたいと思います。

地域から始まる住宅基準の革新

従来、日本の地域・地方は東京(霞が関)を見て、右へならえでやってきました。しかし、それではこれからの状況は厳しくなっていきます。地方の生き残りや復活についてさまざま議論されていますが、実は今もう既に“やったもん勝ち”の状態になっているのです。

例えば福井県では、県独自の住宅基準「ふくいエコはぴねす住宅」を制定し、都道府県単位では全国4番目の高性能住宅基準を実現しました。国の省エネ基準が等級4に対して、福井県の独自基準は等級6です。ただし義務ではなく、あくまで目標として設定されています。さらに既存住宅のリフォーム・リノベーションも対象に含め、新築の場合は気密性能測定なども盛り込んでいます。

広島も政令指定都市ですが、まだこうした取り組みに参画していません。このような地域からの取り組みは、全国展開するハウスメーカーでは難しく、スマイクホームさんのような地域密着型の住宅会社だからこそ実現できる優位性があります。

現在の住宅業界には数多くの会社が存在していますが、しっかりとした住まいを作っている会社は、市場競争が激化したからといって、潰れてしまうわけにはいかないのです。そこで何を柱にしていくのかが重要になりますが、その答えは「健康」であると私は考えます。

近畿大学副学長 建築学部教授建築学部 建築学科 総合理工学研究所所属
岩前 篤教授

住環境と健康の密接な関係

「家のつくりようは夏を旨とすべし」という吉田兼好の言葉は、現代でも住宅業界で引用されることがありますが、これを私は「兼好法師の呪い」と呼んでいます。とにかく断熱なんかしてはいけない、夏のために風通しの良い家作りをしなさいとずっと言われてきました。

昔は夏にたくさんの人が亡くなっていたので、「夏を旨とすべし」というのは正しかったのだと思います。しかし現代では、人は冬に亡くなることが圧倒的に多いのです。日本では冬の健康リスクが夏の30倍も高く、低温の影響で10人に1人が亡くなっているという調査結果があります。およそ10万人が「冬」という季節に命を落としているのが現実です。今私たちは冬リスクの時代に変わってきているという認識をしっかりと持たなければなりません。

WHOは室内温度18℃以上を健康的な温度として推奨していますが、これは平均温度ではなく最低温度であり、日本では断熱性の高い住宅でなければ達成困難な基準です。

実際の調査結果としては、断熱性の高い家に住んだら、さまざまな症状が出なくなる人が増えるということが示されています。例えば重度のアトピーの方が、高断熱住宅に変わって1ヶ月で症状が改善したという事例もあります。

高断熱住宅に住むと医療費が下がるので、そのコストを計算すると、暖房費の省エネ効果を上回る場合もあります。私たちはもっと住環境と健康の関係に敏感になって、住宅が健康長寿の要(かなめ)になるという点を意識していくべきなのです。

「快適」と「健康」の根本的な違い

住宅業界では「快適な住まい」という表現が頻繁に使われますが、皆さまに改めてお伝えしたいのは、「健康」と「快適」は全く異なるということです。私はこれまで「健康」の話をしていて「快適」の話は一言も言っていません。

日本はこれまで「快適」さを追求した結果、さまざまなスタイルの住宅が生まれてきました。しかしそれが「健康につながるのか」と考えると、当てはまらないものも多いでしょう。そもそも日本の家が簡単に壊されて、世界でも類を見ないぐらい短い使用年数でサイクルされているのは、この「快適」だけを頑張ってきたせいだと私は思っています。

そこでこれからは、「快適な家づくり」は一旦置いておいて、「健康な家づくり」をしっかりと目指さなければなりません。健康な家づくりがある程度までいくと、もっと社会資本としての住まいになっていきますし、中古市場も安心して売り買いできるようになります。

HEAT20基準とスマイクホームの取り組み

現在の断熱等級5・6・7は、もともと「HEAT20」という民間団体が提案したG1・G2・G3基準を国が制度として採用したものです。この団体は私が2009年に立ち上げたもので、民間提案が国の基準となる画期的な事例となりました。

海外では民間団体がこうすべきだと主張して、それを国や州が取り上げて、パブリックなルールにしていくのが一般的ですが、日本では初めてのことだと思います。これからはそうなっていくのではないでしょうか。

スマイクホームさんが注文住宅でHEAT20のG2基準を標準とする取り組みは、まさに時代の先端を行くものです。今後もぜひこの方針を継続し、さらに発展させていただきたいと思います。

講演を終えて

岩前教授より、これからは「健康」な住まいづくりが住宅業界の役割であり、個人の幸福のみならず地域創生と社会課題解決の鍵となるという話をお伺いしました。スマイクホームは高性能住宅の提供により、お客様一人ひとりの豊かな暮らしの実現と、地域コミュニティの活性化に貢献してまいります。

後編では、岩前教授と代表取締役大石剛史、ファシリテーターのコマツアキラ氏によるトークセッションをご紹介いたします。

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